ナマステ再び

ネパール滞在後の日常@主に日本です。

2022年に読んだ本

毎年恒例、去年1年間に読んだ本。

利用している読書サイトでのブログまとめがなくなってしまった。SNS中心になったのね、残念。
そのため、今年は表紙のイメージなくリンクもなく、テキストのみになった。
1か月ごとのはあるようなので、忘れなかったら毎月のをためて来年はアップできるかも。

全部で75冊は、普通かな。一番忙しいはずの6月7月はたくさん読めていて、夏休みとかはあまり進まないのもいつも通り。去年は、翻訳物が多くなったのが特徴。最近の翻訳はとても自然だし、今の状況も長い歴史の積み重ねから、などと気づく感じがいい。理解できないのもあるけれど。長いので、面白かったのだけ最初に。たくさん面白い本に出会えた。あ、葉真中さんが3冊も!
クリックすると、感想に飛びます。

以下、☆は面白かったマーク。

【1月】

1)「人生は攻略できる」 橘 玲
人には向き不向きがあるから、全員がポジティブゲームができて成功するとは限らないけれど、今みたいに一つの価値観に閉じ込めさせる日本の教育や社会制度は、世界的な競争には負けるよね。幸福の土台が「金融資本」「人的資本」「社会資本」であるというのは分かりやすい。中高生がこういう本を読んで自分の将来を描けるといいな。

2)「たまごの旅人」 近藤 史恵
旅、特に海外へは次いつ行けるようになるのか。行きたいなぁと思うのは呑気な旅行者、添乗員さんたちは本当にどうされているのか。わがままな旅行者に振り回されつつ、その仕事や行先を好きになっていく主人公の添乗員がいい感じ。そして、最後も目標ができた感じで前向きなのが新年にふさわしくてよかった。

3)「わが盲想」 モハメド・オマル・アブディン
「日本語とにらめっこ」が面白かったので、こちらも読んでみた。スーダンから日本に来て、来日時より眼の状態は悪化し全盲となりながら、日本語と鍼灸を学び、更に国際問題の研究者に。私の周囲にもダジャレ好きな外国人が何人かいて、こういう言葉で遊ぶ楽しさが分かる人が言語を習得していくんじゃないかと感じた。苦労や葛藤もありながら、前向きに進んでいく様子がいいし、すごい。

4)「夜明けのすべて」 瀬尾 まいこ
外からは障害が分からない心因性障害。ほんの少しのバランスの乱れで気持ちや体調が崩れていく。その辛さと周りの人の理解の重要性が良く伝わってきた。ぐいぐい行く人、見守る人、こちらのバランスも大切。そして、できないことからできることへ、自分中心から周りの人への変化の過程がよかった。

5)☆「代理母、はじめました」 垣谷 美雨
確かに代理母システムができれば、子供が欲しい夫婦や独身女性、LGBTQ+はうれしいかも。少子化対策にもなるし。でも、子供は産むのも大変だけど育てるのも大変だし、時間もかかるのだ。産むことだけを代理するだけでは解決できないよなぁ。とは思うものの、登場人物が前向きで発想も面白く一気読み。

6)☆「パチンコ 上」 ミン・ジン リー
主人公の女性が、貧しい生い立ち、障害、人種差別、女性差別という悲惨な状況の中で絶望せず現実と向き合いながら淡々と生き延びていく様がいい。この先の展開が気になる。タイトルの意味はいかに?

7)☆「パチンコ 下」 ミン・ジン リー
どこに行っても、何人であっても、悪い人ばかりじゃない、それを信じた先に、タイトルがつながるんだな。 在日コリアンの話は日本人としては触れたくない話題ではあるけれど、悲惨さとか辛さに偏らず書かれているので、くぎ付けになって読んだ。

【2月】

8)「臨床真理」 柚月 裕子
臨床心理士が自分の弟とクライアントを重ねたり、一人のクライアントに関わりすぎたり、弟の担当の臨床心理士を恨んだりしちゃいかんだろ、と突っ込みながら読んだ。ストーリーの展開も無理やり感があったけど、デビュー作なんですね。

9)「ミラーワールド」 椰月 美智子
男女反転だからミラー。いらいらするけど、よく考えてみると反転すれば今の世の中にもあるあるな話。フィルターかかってるな、私。子供を産むのだけはミラーじゃないけど、それがどう影響することもないのはなぜだろう。どっちに偏ることもなく、イーブンに考えることは難しいのかなぁ。

10)「やっぱり食べに行こう」 原田 マハ
海外はおろか、国内だって制限かかってるし、こんな状況でこんな本を読んだら悲しくなるか、と思ったら、楽しい方が勝った。やっぱり、お取り寄せじゃなくて、現地で食べることが重要なんだよな。あれらの作品はこうやって産まれていくのかぁ。

11)「ミカエルの鼓動」 柚月 裕子
ロボットを用いた手術のメリットとデメリットを中心に医師の苦悩が書かれている。今の時点では、ロボットのメリットを生かしつつ、人間がすぐに対応できるようにするのが一番なんじゃないかな、と。そんなありきたりな感想はともかく、主人公やとりまく人々の考え方、それに至る背景は面白かった。

【3月】

12)「風よ あらしよ」 村山 由佳
大作読了。伊藤野枝、自分の生き方にまっすぐな女性。たたかれてもたたかれてもまっすぐ生きていくのが潔い。もちろん、潔さに振り回された人もたくさんいるけど。今も昔も不倫や略奪愛に世間は厳しいが、叩く側も叩かれる側も今より堂々としていた感じ。子供たちはその後どうなったんだろう。

13)「百花」 川村 元気
多分、このお母さんって私と同じくらいの年齢。自分で本で調べて病院に行っては辛かっただろうなと、こちら側の視点で読んでしまう。前回読んだ本もこの本も、制御できない愛が取り扱われていて、そんな気持ちにならずにこの年になったのは損した気持ちになってきた。千々に心が乱れるのはしんどいだろうけれど。

14)「哲学の蠅」 吉村 萬壱
難解な部分では、それこそ一匹の蠅になって自由に空想世界を飛び回ることができたし、言葉にできていない自分の感情の表現を見つける喜びにも出会えた。充実した読書時間だった。この著者の本読んでみなければ。

15)「あなたにオススメの」 本谷 有希子
2編とも気持ち悪くて、でも起こりうるかもという点では一致するけど、風合いはかなり異なる。どうなるのかと一気読みするものの、決してスッキリとはしない。我が家は川のそばの1階。台風時にはビビるので、2編目は。よけい気持ち悪かった。

16)☆「厨房で見る夢 在日ネパール人コックと家族の悲哀と希望」 ビゼイ・ゲワリ,田中雅子
なぜこんなにどこにもインド・ネパール料理屋があるのか、謎が解けた。コロナ渦で、在日ネパール人の自殺が増えているというのも在日ネパール人から聞いている。少なくとも、親の都合で日本に連れられてきた外国人の子供たちがちゃんと教育が受けられたらと思う。

【4月】

17)☆「同志少女よ、敵を撃て」 逢坂 冬馬
戦う際には動機付けが必要で、思い込まなければならないことも多々あるのだろう。そして、終わった後は価値観ががらりと変わり、なかったことになる事実も多い。だから戦争はなくならないのか。この小説が「小説」として読めないのは悲しい。

18)「LIFESPAN(ライフスパン): 老いなき世界」 デビッド・A・シンクレア,マシュー・D・ラプラント
研究をつき進めていくと、「老い」がなくなっていくのか。確かに最近何事も「加齢」で片づけられてしまうのは不満だが、そんなに長生きしなくてもいいかな、とも思っているのであまり興味が持てなかった。

19)☆「たちどまって考える」 ヤマザキマリ
日本人はあいまいを好み、誰かに決めてもらうことを望み、異なることを排除する。それは、西洋的な民主主義を無理して導入してきたからなのか。日頃モヤモヤしていることを文章で明確に表現してもらった気分。これも自分の頭で考えていない証拠かな。

20)☆「息吹」 テッド・チャン
確かに近い将来こんなことが実現するかもと思わされる短編集。技術者が必死になって開発する新しい技術を人々の幸せのために活用するのは難しいな。人間の本質は変わらないので、使いこなせない。そして、人間のあいまいさで救われることもある。

21)「ムスコ物語」 ヤマザキ マリ
親は自分の考えるように子供も考えると思いがちだが、子供は子供の考えがある。「自由に」育てるというのも「自由」を強いていることになるしなぁ。ヤマザキさんの思い入れが端々に、そしてそれに応える(応えざるを得ない)ムスコくん。そして成長した今、対等の関係になっているのがいい感じ。うちのムスコたちは、どう思っているのかなぁ私のこと。

【5月】

22)「神曲」 川村 元気
何を伝えたかったのかな。人間の心の弱さ?、家族の絆?、信じ込むことの怖さ?私が一番印象に残ったのは、子供は親を信じているけど、親だって自信はないというところ。親の役割も初体験なんだから、もっと優しい目で親を見てほしい。私は幸い大きな事故なく親をやってきたけど、全然自信なんてなかったし、今もない。

23)「ミス・サンシャイン」 吉田 修一
多分、主人公は大学院生の男の子ではなくて、80代の鈴さん。そして恋愛が主題ではないんだと思う。売るために?、それが前面に出されてしまったのが残念。鈴さんの生きざまだけで十分に読み出ありそうなのに。

24)「移住者たちのリアルな声でつくった 海外暮らし最強ナビ【ヨーロッパ編】」
妄想移住が楽しい。実際、現在の仕事を終了したら(いつ?)1年くらい海外に住むのもいいな。リタイヤメントビザの情報はあまりなかったけれど、夢は膨らむ。

25)「スモールワールズ」 一穂 ミチ
色々抱えて考えて生きているんだ、みんな。と改めて感じる短編6つ。どれも、確かにそういう考え方もあるなと新鮮だったり、このきらいはあるなと共感したり。

26)☆「赤い十字」 サーシャ・フィリペンコ
翻訳が素晴らしく、海外文学を読むハードルが低かった。戦争の中で、諦めと逃げと戦いと。同じ国の同じ戦争を戦った人の中でも、考え方は色々だし、粛清が行われる中、正しい判断なんかできないということが良く分かる。悲惨な話だが淡々と語られるので引き込まれた。現在の状況を見ると昔の話と言えないのが悲しい。

27)「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」 河野 啓
ニュースで見る程度しか彼のことは知らなかったが、この本に書かれているようなキャラクターだったのなら、きっと、没後こうやって本にしてもらえることは本望だったんじゃないかと思えた。本音を吐き出せる人がそばにいたなら違った結果になったのだろうか。彼は彼を演じきったという意味ではすごいけれど、読んでて苦しくなった。

28)「ロマンシエ」 原田 マハ
フランスの街並みや、リトグラフの鮮やかさ、そして主人公や周りの個性豊かな人々、う~ん活字では難しいかも。映画とかドラマとかで軽~く、でも魅力的に、再現されたら楽しそう。

【6月】

29)「日本人とエベレスト―植村直己から栗城史多まで」
読んでいるだけで、息が苦しくなってきてしまう私には8000mなんてとても無理だけれど(4000mまでは行ったことがある)、それだけ危険がありながらも魅力的であるということは良く伝わってきた。時代の流れも良く分かった。登れなくても、直接臨むことくらいしたいものだ(飛行機からしか見たことがない)。

30)「マンガでわかる統計学」 高橋 信,トレンドプロ
データサイエンスを教えることになり、泥縄勉強の最初として読んでみた。社会人対象の例題を扱う本が多い中で、女子高生相手の例が身近でよかった。まあ、計算式は難解だけれど、付録についてるExcel例を本文にも取り入れて視覚的に実践できるようになっているともっと分かりやすいかな。

31)「図解でわかる 最新エクセルのデータ分析がみるみるわかる本[Excel2021/2019/2016対応版]」 道用大介
これは、分かりやすかった。「超簡単」って書いてあるだけある。データもダウンロードできるので実践できるのがいい。「セクシーな仕事」ってどんなの?

32)「硝子の塔の殺人」 知念 実希人
久々のミステリー。蘊蓄についていくことがあまりできなかったので、特に日本のミステリーについてちょっと追ってみたい。 謎解きは楽しいんだけど、ちゃんと殺人が起きていて、その動機が…なのはちょっと納得できず。

33)☆「灼熱」 葉真中 顕
ブラジルに日本からの移民が多いことは知っていたし、移民生活の大変さ、戦争中の迫害などは見聞きしていたし、想像もできた。しかし、戦後その勝敗をめぐって移民同士の争いがあったことは初めて知った。今のように世界中で簡単に情報が入る世の中でもなく、信じたい気持ちとそれを利用しようとする人々、スケールの大きい、でも悲しい話だった。読み応えあり。

34)「ガラスの海を渡る舟」 寺地 はるな
硝子でできたあれこれは好きだけど、私はそんなきれいな骨壺に入りたくはないかな。それは、残された人のためのものだよね。でも「死は死だけだ」の言葉に深く頷いた。自分にも周りにも色んな感情なしに死を迎えられるのが理想だな。って、そんな話ではありません。

35)「老後とピアノ」 稲垣 えみ子
最近ちょっとだけピアノを復活し触っている身として、なんとぴったりな題名!と手に取ってみたけど、性格の違い?か全く異なる取り組み方だった。毎日2~3時間!?、初心者と言っているけど挑戦している曲は!だまされてはいけません。取り組み方もハードなら、目指すものも高い。全然参考にはならなかったけど、指と脳の問題というのには深く納得。自分のやりたいようにやればいいよね、老後なんだし。

36)「鳩護」 河崎秋子
何がどうなるというドラマチックなことがあるような、ないような。でも、結構はまって読んだ。インターネットが横行する世の中じゃ鳩の役割は平和の象徴しかないけれど。主人公はこの先どうなって行くんでしょう。

37)「教育」 遠野遥
う~ん、これは。閉鎖された教育の恐ろしさを描いているのだろうか。それにしても、意図不明。「こんなこと思いつかないでしょ」と試されているのかな。最後まで謎に包まれたままだった。

38)☆「農ガール、農ライフ」 垣谷美雨
挫折がいっぱいある中、めげずに進んでいく主人公がいい感じで応援したくなる。自分の悪いところは反省し、まじめに課題に取り組み、思いついたら行動し、味方を作る。農家さんの意識が変わらないと若者は農業に向かわないよね、どうしたらいいのかな。

39)☆「タラント」 角田 光代
私は年取ってから国際協力の世界をちょっと味わっただけだけれど、それでも使命感を感じやすい世界だというのは分かる。何もできないし変えられないけれど、知らないより知ることは大事だと私は思う。感情を持てる自由もかみしめつつ。それぞれ持っているタラントは違うけれど、どんな形にしろ使っていきたい。読み応えあり、面白かった。

【7月】

40)「ワンダフル・ライフ」 丸山 正樹
エンドロールのような結末は途中から薄々気づいた。障碍者は昔よりも日常出会うことが増えたとはいえ、それは自力で動ける人。動けない人は家の中や施設の中にいるから、目にしていないのだと改めて思った。そして目にしないものへの想像力は乏しいとも。少しではあるが厳しい現実(本当はもっと大変なのだろうが)を知ることができた。

41)「匣の人」 松嶋 智左
地方の街のお巡りさんと近所の交流、人との距離が近くて大変だけど、その近さが事件を解決している。仕事しながら、人も育成しなきゃならず、でも成長してくれれば何よりだ。個人的には在日外国人絡みの事件の方をもう少し詳細に知りたかった。テーマがそれではないので仕方ないけど。

42)☆「オオルリ流星群」 伊与原 新
高校の時に一緒に打ち込んだ仲間が中年になって再開し、また何かに打ち込むってありそうだけど実際にはほとんどないだろうなぁ。一種のおとぎ話かも。地域にも親しみがあり、音楽も懐かしく、時も七夕、見えない天空の塵に浸りました。

43)「星を掬う」 町田 そのこ
母と娘と言う関係は「分かる」と錯覚してしまえる分距離が近くなりすぎてしんどいのかもしれない。「私のようになって」あるいは「私のようにならないで」。日本は親子や家族の距離が近すぎる、もっと離れてもよいのにと思う。読むのが辛いが読み終えると読んでよかったと思う本。

44)☆「ロング・アフタヌーン」 葉真中 顕
最初が強烈過ぎて、途中の冗長さにどうなるの?と思ったら、裏切らず最後にがつんと余韻を残し…。男性がここまで描けるのかと驚嘆。さすがでした。

45)「琥珀の夏」 辻村 深月
周りから見れば努力が報われているように見えるのに社会的なステータスを持たない母親が理想的な理念を持つ団体に子供を預け自分のようにならないで欲しいと願うのは理解できる。でも結局人間が育てる以上、理想は理想でしかないのだろう。図書館の待ちが非常に多いのも納得の一冊。

46)「爆弾」 呉 勝浩
謎解きもさることながら、人間の本音部分も抉り出す。無差別爆弾に潜む命の差別。扱う内容は惨いので、この時世評価されにくいと思うが、読み応えあり。

47)「信仰」 村田 沙耶香
不気味さは減って、深みが増したように感じる短編集。発想自体に感動し、その展開に唸り、あーこういうことかと納得する。「現実こそあなたの洗脳です。」正しいと思っていることは全部洗脳なのかもしれない。

48)「サハラの薔薇」 下村 敦史
砂漠のサバイバル、国際的な社会問題、個性的なそしてそれぞれ裏を持つ登場人物、スピード感、映画化したら面白そう。そんな大舞台ながら、主人公の気持ちの小ささに親近感を覚えた。砂漠の描写で暑さが倍増したけれども、面白かった。

【8月】

49)「理不尽ゲーム」 サーシャ・フィリペンコ,奈倉 有里
10年間昏睡し目覚めることがテーマなのではなくて、目覚めても世の中が変わっていないことがテーマなのだった。ずっと状況の中にいれば埋もれてしまう事に気づいても、どうすることもできない現実。「正義」って何なのだろう。ここまでじゃないにしても、日本も目につかないようにされているあれこれが積み重なっているなぁ。

50)「ヌマヌマ ; はまったら抜けだせない現代ロシア小説傑作選」 ミハイル・シーシキン ほか
なぜだか、最近旧ソビエト連邦関連の本をよく読んでいる。行ったことないし(アエロフロートでトランジット1泊したことはある)、特に今は戦争も起こっているけど(報道だけだと全面的にロシアが悪い?)、良く分からないというのが実際のところ。で、この本を読んでも良く分からないのだが、比喩、暗喩がぶっ飛んでいて面白い。でも、こう表現するしかないというのかもしれない。

51)「無理ゲー社会」 橘 玲
社会的・経済的にはある程度格差が縮められても(これも、政策を決めている富裕層かつ老人が採択するとは思えないが)、評判格差は縮められないのに、長生きしなければならない現代、厳しいな。私たち老人は、人生100年なんて言ってないで早く去った方が世の中のためなんだろう、実際は。

52)「やさしい猫」 中島 京子
作中で語られるスリランカの童話とされる「やさしい猫」が日本人の感覚では素直に読み取れないのと同様、外国人の感覚は分からないところがあるが、外国人に日本で働いてもらわないと立ち行かないのも現状。悪意がある場合もあるだろうが、制度もコロコロ変わり分かりにくいのも確かだ。必要な情報がちゃんと必要な人に伝わる仕組みが大事。

53)「今度生まれたら」 内館 牧子
60代を驀進中。そうか、70代はもっと怖いのか。ちょっと憂鬱。でも、この主人公自分のしてきたことに対して、自分が決めたことと分かっているのが偉いし、あーすればよかったとないものねだりばかりしていないのがいい。みんな元気なばーちゃんを装っているけど色々あるよね。頑張ります。

【9月】

54)「情熱の砂を踏む女」 下村敦史
1度闘牛を見ただけで「闘牛士になる」と決める軽いヒロインに感情移入できず。最後に明かされる事情を含めてもストーリーは都合よすぎ。まあ、闘牛について色々知れて、一度見てみたいと思った。

55)「疼くひと」 松井 久子
70歳過ぎたからと言って枯れた生活をしなければならないわけではないし、いいんだけれど、入り込めなかったな。 そもそも、なんでこの本を読むことにしたんだっけ?ちょっと年上の女性が主人公の小説に呼ばれている感じ?脱出したい。

56)「象の皮膚」 佐藤 厚志
ストーリーがあるようなないような。アレルギーの辛さは伝わってくる。それと日常が渾然一体となっているところが、リアリティがあるとも思う。

57)☆「ラブカは静かに弓を持つ」 安壇 美緒
チェロと言う低温で響く楽器がこのストーリーに合う。音楽を文章で表すって本当に大変なことなんだろうけれど、読みながらずっとチェロの響きが頭の中に鳴りつつ、不安になったり、主人公を応援したり。やっぱり結末はこうじゃなくちゃね。

58)☆「凍てつく太陽」 葉真中 顕
第2次世界大戦については、学校で学ぶことはなく断片的に12月や8月に報道で特集が組まれるので知る程度。特高や憲兵の争い、民族問題、軍の機密事項と横領、有事ならばなんでもアリだろうと思うけれど、ストーリーに厚みがあってスピード感もあり、読み応えがあった。 服みたいな国や民族に今でもこだわってるんだな、人間は。

【10月】

59)「闇という名の娘~The HULDA TRILOGY #1:DIMMA~」 グナル・ヨナソン
64歳の女性警部。北欧であっても「ガラスの天井」があるんだなぁと。それはともかく、この主人公を育ち方、人生、結末が悲しすぎる。訪れたことのあるアイスランドの重い空を思い出しながら、辛い人生をたどった。最後から辿る3部作の1作目とか。結末が分かったうえでさかのぼっていくのはどんな展開になるのか興味がある。

60)☆「パンとサーカス」 島田 雅彦
辞書みたいな厚さで持ち歩きには不向き。内容はそんなに重くはなく、メッセージがありつつエンタメ感も多いので読みやすい。確かに世直し必要で、だれか出てきてと他力本願ながら思う毎日。そしてきっとそれはネット内で進んでいくんだろうなと納得の内容。だけど、結局最後は血を流さなければサーカスはできないのか。

61)「フォンターネ 山小屋の生活」 パオロ・コニェッティ
静かな秋の夜長に読みたい本。見たことのないイタリアの山々を想像して。 登場人物が本を読み始めた理由として、自分の思いを表現するには語彙が足りなかったからと言うのがとても印象に残った。

62)☆「そして、海の泡になる」 葉真中顕
女性の幸せとは、結婚でも出産でもないものもあるんだよ。だけど、幸せって何だろう。主人公(小説の題材となっている)はちょっと年上ではあるけれど、あの時代はそうだったかもと思い返しながら重なる時代を味わった。成功・失敗は他人の尺度、幸せは自分の尺度なんだな。

63)「ごはん作りの絶望に寄り添うレシピ やる気0%からの料理術」 本多 理恵子
レシピよりもエッセイが楽しい。今は家族が減って二人だし、相手はうるさいことは全く言わないけれど、簡単なものって何?と思うし、急に夕飯いるあるいはいらないと言うなよとイラっとする。料理を生業にする人でもそうなんだ~と。レシピはまだ作ってないが、ポン酢とオリーブオイルでサラダは美味しかった。

64)「おあげさん」 平松 洋子
おあげさんって関西弁?油揚げに対する敬意を感じる。そして、全面に連なるおあげさん愛。はい、初めて松山揚げを買ってみたし、油揚げも冷蔵庫に準備。何作ろうかな。関西のきつねうどん、是非食べてみたい。

【11月】

65)「帰れない山」 パオロ コニェッティ
先日読んだ「山小屋の生活」の読後感が良かったので、代表作を読んでみた。イタリアの山々、手作りの小屋、幼馴染ではあるけれど生活環境が全く異なる二人、そして主人公がネパールに惹かれる様子の描写がくっきりとしていて、見たことのない舞台を勝手に思い描きやすい。季節に応じて生活環境を変えることができて、成長してからも世界中を渡り歩く主人公と、ひとところに留まる幼馴染の考え方のギャップは大きく、お互いを分かりあうのは難しいだろう。

66)「ぶらり、世界の家事探訪<ヨーロッパ編>」 阿部 絢子
日本国際生活体験協会と言うのがあって、海外での暮らし体験(ホームステイ)の紹介をしていることを知ったのが一番の収穫。家事の男女平等については女性側もハードルを上げている感じもする日本。若い人たちを見ると、女性だってちゃんと家事ができないので一緒に助け合っているカップルも多いんじゃないかな。ヨーロッパ編だけじゃなく色々な国の体験もあったら読みたい。

67)「セカンドチャンス」 篠田 節子
常に人のことを優先して自分のことを後回しにしてきた主人公が51歳にして自分で楽しむことを覚え自由になっていくお話。人間いくつになっても。。。と言いたいところだけど、51歳?まだまだ若いとこの年になると思う。 単純なので私も自己流で泳ぐのではなくて、習いたいなと思った。前向きな話はいいな。

68)「夜の道標」 芦沢 央
これは、殺人事件の犯人探しや動機探しがメインテーマではないのだろう。でも、多くのテーマを含み過ぎてしまって、最後に回収されないまま終わってしまった感がある。 もっと主要登場人物それぞれの気持ちが読みたかったなぁ。タイトルと内容がうまく結びつけられない。

69)「飛び立つ季節 :旅のつばくろ」 沢木 耕太郎
旅のつばくろ第2弾。旅行の最中、車載誌で見かけた文章を見つけ、その旅を思い出す。 旅に出かけることのできる自由が制約されて、旅の貴重さが増した。迷ったら行く、私もそうして行こう。

70)「らんたん」 柚木 麻子
前に読んだ「花よ嵐よ」とも時代が被り、この時代の女性(もちろん、ごく一部だろうけれど)は、アクティブで前向きでしっかり時代と戦っていたんだなと感心する。彼女たちが築いてきた自由や権利をちゃんと有効に使っているのだろうかと自問自答。あんまり世の中変わっていないのは、やっぱり私たちの力不足だな。 ミッションスクール出身なので、戦時中と困難さもなんとなく伝わり、学生たちの雰囲気も懐かしかった

【12月】

71)「夏日狂想」 窪 美澄
大正から昭和にかけて、意思をしっかり持って生き抜いた女性の話がなぜか続いている。モデルになった実在の人たちは、読み終わってからここで知り、なるほどと思う。自分に正直であったけれども、人にも誠実だったので、周りの人は翻弄されながらも応援し続けたのだろう。 今の世の中このような生き方をしたら、散々叩かれつぶれてしまうのか、それともこのような女性なら更にしたたかに生きていけるのか。

72)「裏家電」 嶋戸 悠祐
最初は、父親の思いを汲む若い女性の成長物語だと思って読み始めたが、意外な展開に。 家電量販店に行ったら、店員さんたちを見る目が変わりそう。インカム怖いな。

73)「はじめての」 島本 理生,辻村 深月,宮部 みゆき,森 絵都

車吊広告で、ばば~んと宣伝していた作品群。YOASOBIとのコラボも魅力的。歌詞もPVの画像も、読んでから見ると楽しい。最後の森絵都さんのが、最後ニヤリとなってよかった。

74)「きときと夫婦旅」 椰月 美智子
3か月前に富山(氷見も!)を一人旅したので、風景を重ねながら、楽しんだ。そしてもっとあそこも行きたかった、その電車にも乗りたかったともう一度行きたくなった。 ストーリーは、ありがちな夫婦関係かな。子供が出て行ってからが長いよ。この夫婦はどうなるのでしょうか。

75)「絞め殺しの樹」 河崎 秋子
河﨑さん3冊目。暗い話であることは重々承知の上で目が離せない。締め殺しの樹、なぜそんな木の下で釈迦は悟りを開いたのか。締め殺されたくはないし、締め殺す側にもなりなくない私は悟れないという事か。他で生きていくこともできるのに、わざわざ困難な環境に留まる&戻る気持ちも理解できないのは、根を生やす必要がない都会で暮らしているからだろうか。

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テーマの著者 Anders Norén