ナマステ再び

ネパール滞在後の日常@主に日本です。

2023年に読んだ本

恒例の1年間に読んだ本のまとめ。
読んだ本の数:79
読んだページ数:22724

遠距離通勤のおかげで、まあまあのペース。

面白かったのは、

  • 白い鶴よ、翼を貸しておくれ
  • 六人の嘘つきな大学生
  • 日本でわたしも考えた
  • まっとうな人生
  • 獣の夜
  • 宙わたる教室
  • 旅に出よう

2023年の特徴は、「乙嫁語り」という漫画を一気読みしたこと。漫画は好きだけど、沼にはまりそうで手を出していなかったので。あとは、海外の著者の本を少しずつ増やしたことかな。

今年は、少し遠距離通勤が減る予定なので、読書量も減るかも。さらに、海外の本に目を向けていきたい。

白い鶴よ、翼を貸しておくれ白い鶴よ、翼を貸しておくれ感想
チベット人による初めての小説、それも英語で書かれたものだそうだ。前半はキリスト教の、後半は中国共産党の侵略が書かれている。チベット仏教の寛容さ、今のこのままを大事にする気持ちが心に残る。後半は、かなり残虐な描写が続く。何年か前、ネパール側からチベット付近に近づいたときドライバーがダッシュボードに掲げていたダライラマの肖像を隠した光景と重なった。
読了日:01月07日 著者:ツェワン・イシェ・ペンバ
喪われた少女 (小学館文庫)喪われた少女 (小学館文庫)感想
アイスランドのRヨナソン2作目。1作目から遡っていくシリーズが不思議。事件の解決のために(出世のために)証拠をねつ造するのはどこの国でもあるんだな。解決をする女性警官の孤独と環境が事件解決よりも印象に残る。
読了日:01月11日 著者:ラグナル ヨナソン
AI監獄ウイグルAI監獄ウイグル感想
テクノロジーは、軍事技術から発達するのは歴史上分かっていたが、AIはこんな形で実現されていたのは衝撃だった。中国と米国は相対しているように見えるものの、中国の技術者はアメリカの大学で研究しており、アメリカの企業は用途を考えず利益を追求するために中国政府を利用している。いまのところ最もAIを利用できるのは「監視」になってしまうのか。
読了日:01月20日 著者:ジェフリー・ケイン
俺ではない炎上俺ではない炎上感想
犯人探しも逃亡劇もなりすましもよく出来ていて、まんまと引っ掛かり、ネットの怖さも十分味わった。けれど、「自分は悪くない」とみんな思っているというところが主題なのかな。自分に非がないようにふるまって、うまく行かないことは人のせいにして、…あるよなぁ。スピード感もあって一気読み。
読了日:01月22日 著者:浅倉 秋成
名もなき子名もなき子感想
う~む、前編があったのか。それを知らずに読んだので回想シーンが???だったのがもったいなかった。高齢者問題だけではなく、無戸籍、幼児虐待、AI、外国人労働者と関わってくる問題は様々だが、全体を通して人間の尊厳が主テーマ。そんなに簡単に解が出てくるわけではないテーマだけれど、最後が前向きに終わるのが救われた。
読了日:01月24日 著者:水野 梓
岳 (1) (ビッグコミックス)岳 (1) (ビッグコミックス)感想
1巻、2巻をスキー宿で読む。山岳救助ボランティアっていったい何?と思いながら読むものではないのか。山は遠くから眺めるのは大好きだけど、過酷な自然に立ち向かう気分は私には分からない。なのに、悲惨な事故の話が多い中、山の魅力も伝わってくるのが不思議。
読了日:01月30日 著者:石塚 真一
デジタル・ファシズム: 日本の資産と主権が消える (NHK出版新書 655)デジタル・ファシズム: 日本の資産と主権が消える (NHK出版新書 655)感想
AIをどう使うか、そしてどう学習させるかは、人間にかかっている。「今だけ金だけ自分だけ」の思想で将来の世の中を想像せずに技術を使っていけば大変なことになる。とは思いつつ、どんどん進んでいく世の中を見送っている状況。もっと真剣に世の中を見ていかなければ。トップには期待できないということもよく分かった。
読了日:01月31日 著者:堤 未果
六人の嘘つきな大学生六人の嘘つきな大学生感想
社会人うん十年経ったから新卒の入社先なんて人生の些細なことだと分かっているが、大学生たちにとってはそれで人生が決まると思っていることを就活に関わっている身としては実感する。ストーリーに振り回されるのも楽しく、就活の本質をついていて、最後は爽やかに終わり心地よかった。人間には色々な面があるし、成長もする。
読了日:02月05日 著者:浅倉 秋成
こちらあみ子 (ちくま文庫)こちらあみ子 (ちくま文庫)感想
映画をみて複雑でまとめられなくて、原作を読んだが、やっぱりまとめられない。解決を求めている話ではないのだと思うのだが、やっぱり父親、先生(保健室の先生含め)など周りの大人がもっとあみ子が楽になる方向へ動けたんじゃないかと思う。楽になると考える方向があみ子にとって楽なのかは分からないな。でも、もっと知りたいという気持ちに答えられていたら。
読了日:02月06日 著者:今村 夏子
蝶の眠る場所蝶の眠る場所感想
名もなき子を先に読んでしまい、前作の登場人物らしき人が気になったので読んでみた。背景が丁寧に描かれているが、急展開となるラスト部分が物足りない。バランス的にもっと後半にボリューム割けていたらと思った。人物の謎は解けたけれど、この事件の冤罪は解決できたのだろうか。
読了日:02月13日 著者:水野 梓
日本でわたしも考えた:インド人ジャーナリストが体感した禅とトイレと温泉と日本でわたしも考えた:インド人ジャーナリストが体感した禅とトイレと温泉と感想
外国人が見た日本的な話はよくあるけれど、公平な視線で書かれているのはジャーナリスト所以か。職人とジュガールがとても興味深い。確かに、日本は正確ではあるが柔軟ではない。そして、今世界で求められているのは正確さじゃないところが日本の凋落を招いているのかも。臨機応変ができないからのコロナ対策についての考察も面白かった。インドに行って、「インドでわたしも考えた」いな。
読了日:02月23日 著者:パーラヴィ・アイヤール
女性の死に方女性の死に方感想
女性にはあまり特化せず、法医学者のところに運ばれてくる死者の死因について社会現象も踏まえて説明している。「死」を美化することも陥れることもなく、それでも悲しい死に方を提示することで、不幸を少しでも避けられるようにという暖かさを感じた。法医学の世界は女性が多いというのも興味深い。
読了日:03月03日 著者:西尾 元
掬えば手には掬えば手には感想
主人公は大変だな、というのが一番の感想。でも、きっとそうすることで自分を保っているのだと思う。しか~し、そこまで人の気持ちを大切にするなら、河野さんの気持ちを分かれよ、と思う。まあ、人間なんてそんなもの。すべてに神経は配れないよね。
読了日:03月07日 著者:瀬尾 まいこ
クロコダイル・ティアーズクロコダイル・ティアーズ感想
だって、このタイトルなんだもん、〇〇だよね~、とは思うけれど、実際のところはどうなんでしょう。でも、したたかな女性は好きです。傍にいなければ、応援しちゃう。
読了日:03月13日 著者:雫井 脩介
アロマの国だより ストイッツォの長い旅アロマの国だより ストイッツォの長い旅感想
著者がアロマのことはもちろん、キリスト教や南フランスの田舎の様子がよく調べられているのに感心した。そして、その中にごく自然にアロマの妖精たちが登場する。それぞれの匂いを味わいながら読みたかった。ちょっとだけ今の日本が出てくるのも楽しかったな。
読了日:03月22日 著者:恵野 十未香
カレーの時間カレーの時間感想
確かにこういう昭和の男性はたくさんいると思うし(どちらかと言うとこちらに近い年代)、令和の男性からどう見えているかもを分かりやすかった。令和になれば、表面上は男性女性と切り分けることはNGとなって、あれこれ色々思い込みはしないよう決められたけど、それはそれで思考停止になってしまうきらいもある。カレーが美味しそうで、香りがしそう。明日はカレーだ。
読了日:03月27日 著者:寺地 はるな
閉じ込められた女 (小学館文庫 ヨ 1-6)閉じ込められた女 (小学館文庫 ヨ 1-6)感想
暗く救われない女性刑事シリーズ最終章。けれども、目が離せず一気読み。時間に逆行して書かれているので、事件に加えて、主人公の家族の物語も明らかに。事件を解くより、仕事に生きるしかなくなった主人公の辛さ、暗さが冬のアイスランドの閉塞感と相まって伝わってくる。登場する女性は全員「閉じ込められ」ている。
読了日:03月30日 著者:ラグナル・ヨナソン
罪の因果性罪の因果性感想
一気読みではあったのだけれど、後味はあまりよくない。ひょんなことから犯罪に巻き込まれて100%悪くないわけではないにしろ、その人の人生が大きく変わってしまう可能性があるというのは怖い。更に勘違いで復讐されてしまうなんて救われなさすぎる。
読了日:04月05日 著者:横関 大
おいしいごはんが食べられますようにおいしいごはんが食べられますように感想
ああ、こうやって本音を隠してみんな生きているのか。だから、歪んでいっちゃうのかな。どんなものを食べるにしたって、辛かったり苦しかったり元気じゃなかったりしたら、おいしくはないでしょう。それで、このタイトルということか。
読了日:04月08日 著者:高瀬 隼子
JK、インドで常識ぶっ壊されるJK、インドで常識ぶっ壊される感想
タイトルはそのまんますぎて物足りないけれど、JKの視線でインドの生活を感じるままに書いているのがとてもよい。親の仕事で恵まれた環境で過ごしているものの、そこに甘んじず、できる範囲で積極的により多くのものを見、経験しようとしている姿勢、そしてそれを的確に表現する力に感心した。
読了日:04月12日 著者:熊谷はるか
罪の境界罪の境界感想
このタイトルには説得感があるし、この手の犯罪に同情はできないものの、子供の虐待は辛いし、その子たちの成長を考えると歪んでしまうのも分かるような気がする。そして、それは連鎖してしまう。加害者の背景を追う話は多いが、被害者の気持ちも丁寧に書いているのがよかった。
読了日:04月14日 著者:薬丸 岳
光のとこにいてね光のとこにいてね感想
環境が随分離れているけれど、お互い母に振り回されている娘二人。切ないし、辛いながらも、甘く感じるのはココア故か。昔のすれ違いドラマをほうふつとさせる出会いと別れの連続。お互いのパートナーも幸せになってほしい。光のとこにいれば、見つけられるね、離れていてもいつかどこかで。
読了日:04月18日 著者:一穂 ミチ
肉弾肉弾感想
人間は目の前のことだけを考えて、野生動物を駆逐し、ペットを飼う。本当は青年の成長物語なのかもしれないが、それよりも人間の勝手で生態系が崩れた北海道の森の方がリアリティがあり面白かった。
読了日:04月21日 著者:河崎 秋子
デジタルで変わる子どもたち ――学習・言語能力の現在と未来 (ちくま新書)デジタルで変わる子どもたち ――学習・言語能力の現在と未来 (ちくま新書)感想
まだ分かっていないことも多いけれど、乳幼児については、デジタル機器にせよテレビにせよ、そばで大人がはなしかけるなどの働きかけをすることが大切というのは納得。学習能力の発達だけでなく、目に対する影響なども気になるところ。結果がはっきりしてくるには、まだ時間がかかりそうだし、どんどんテクノロジーは進化するから研究が追いつきそうもない。
読了日:05月02日 著者:バトラー 後藤 裕子
両手にトカレフ両手にトカレフ感想
イギリスで育児放棄されている子供が日本の金子文子の自伝を読んで…という話だけれど、日本の現代でも状況は変わっていない。いずれにしても、生まれてきた子供には責任がないし、責任が取れる大人ばかりが子供を産むわけではない。だから、社会が私たちがどうにかしないと。主人公がラップと言う自己表現でみんなに感動を与える側の人になれたら、本当にいいね。
読了日:05月09日 著者:ブレイディみかこ
彼女たちのいる風景彼女たちのいる風景感想
大学時代の友人3人の20年後。大学卒業という同じ時点からではあるが、その前の20数年の軌跡も違うし、その後の生き方も異なる。自分が選んだものもあるし、なぜかそうなってしまったのものある。身近な分比べてしまうし、自分は見せない部分があるのに、人は見えている部分だけを信じてしまう様子が読んでいてもどかしいけれど、ありがち。医師との距離が近すぎるのが非現実的ではあったけれど、彼女たちの葛藤はとても理解できるし、悲しい場面もあるが読後は爽やか。
読了日:05月11日 著者:水野 梓
真珠とダイヤモンド 上真珠とダイヤモンド 上感想
同時代に社会人であったのにもかかわらず、地味なエンジニアで子育て真っ盛りだったからか、違う世界の話みたい。でも、聞いてるバブル時代ってこうだったのか、そしてこの後の時代も知っているだけにゾワゾワする。早く下巻が来ないかなぁ(図書館待ち)。
読了日:05月19日 著者:桐野 夏生
君のクイズ君のクイズ感想
なぜあんなに早く答えられるのか、というクイズ番組への謎がある程度明らかになったし、「競技」ならば対策も様々な面から考えなければならないし、確かにTV番組ならばすべてに演出があるもんね、など、なるほど~の連続でした。人生に対する「ピンポン」それも納得。
読了日:05月23日 著者:小川 哲
軋み (小学館文庫 あ 7-1)軋み (小学館文庫 あ 7-1)感想
なんとなく読み続けているアイスランドミステリー。主人公が女性警察官で孤独なのも一致しているし、被害者が女性なのも似ている。北欧は女性活躍先進国というイメージがあるが、やはりジェンダー問題は深いのか。暗くて寒くて悲しい雰囲気に魅せられる。
読了日:05月25日 著者:エヴァ・ビョルク・アイイスドッティル
人はどう死ぬのか (講談社現代新書)人はどう死ぬのか (講談社現代新書)感想
誰でもいつかは死ぬわけで、それについて語るのがタブー視されているのは、確かに不思議だ。医療が充実していない新興国に行ったときに家族の死に対して自然なものとして捉えていて淡々としているのが印象的だったが、それが自然なんだな。健康にもそんなに拘らず、自然に過ごし、家族にもきちんと延命治療はしないよう伝えておかなければ。(いざ、重い病に侵されたら冷静にはなれないかもだけれど)

読了日:06月02日 著者:久坂部 羊
噓つきジェンガ噓つきジェンガ感想
詐欺と言うのは、ちょっとした心の弱さに付け込んでくる。誰でもあるような。だから、読んでいてハラハラした。でも、最後がドロドロにならないのが良かった。めでたしめでたしではないけれど、せめて、お話はこうあってほしい。
読了日:06月05日 著者:辻村 深月
こどもお金ルール お金の仕組みを学び、お金の哲学(マイルール)をつくる本こどもお金ルール お金の仕組みを学び、お金の哲学(マイルール)をつくる本感想
「はじめに」に書かれている「お金の話はするもんじゃない」と育った。頑張って働いて稼いで、欲しいものを買うか、貯めるかの視点しかない。つまり、「消費」と「貯蓄」。ちゃんとこどもの頃から勉強するのは大切だ。「寄付」はちょっとしているけれど、「投資」これからできるだろうか。う~ん、成人してしまった自分の子どもたちにも教育してないな。大丈夫かな。
読了日:06月08日 著者:高濱正伸
少女を埋める少女を埋める感想
題名から想像したものとは全く違った。私小説と言っても創作も加わるのは分かっているが、作者を知っている人にはそうは思いづらいのも分かる。ここまで書いて大丈夫?と心配する作品もある。それとは別に評論の難しさ。プロなんだから、と思う一方読みながら自分と重ね合わせたり、他の本と混ざったりして書いていないけれど付け加えてしまうものってあるよねぇ。
読了日:06月09日 著者:桜庭 一樹
日本のいいもの おいしいもの THE WONDERFUL & DELICIOUS IN JAPAN日本のいいもの おいしいもの THE WONDERFUL & DELICIOUS IN JAPAN感想
私も知らない日本のおいしいものがいっぱい。水彩画が更においしそう。図書館本だったので返却期限が迫り、日本語だけを読んでしまったのが残念。
読了日:06月14日 著者:KAILENE FALLS
日本に住んでる世界のひと日本に住んでる世界のひと感想
絵のタッチからすると海外から日本に来た人のほんわりした話かと油断するが、それぞれ事情があり、壮絶な経験を経て日本に来て、日本でも安心した生活ができていない人の強烈な話もある。やっぱり、私は平和ボケしてるんだな。読み応えのある本でした。
読了日:06月14日 著者:金井 真紀
逃亡くそたわけ (講談社文庫)逃亡くそたわけ (講談社文庫)感想
続編を読みたくて、まずこの本から。本人たちはメンタルの病気で実際には非常につらいのだろうけれど、コメディタッチで軽く書かれていて楽しくさえなってしまいます(犯罪的なものもあるけれど)。そして馴染みのない九州の方言も意味を想像しながら読むのも楽しい。この続編?どうなるんだろう?
読了日:06月16日 著者:絲山 秋子
真珠とダイヤモンド 下真珠とダイヤモンド 下感想
もちろん一気読みではあったんだけど、あっけない最後。捻りもなくと思ってしまうのは、この時代の終焉をすでに知っているからか。でも、女性の描き方が相変わらずシビアです、桐野さん。
読了日:06月19日 著者:桐野 夏生
完全なる白銀完全なる白銀感想
久々の山岳もの。環境問題、民族問題、ジェンダー、生きる目的、仕事、友情などが盛り込まれていて、読み応えあり。一方、これは山に登ることが主テーマではないからか、登山シーンは甘めかも。ハードな山の山頂に到達した人しか見ることのできない景色、私は本からしか味わうことができないのでちょっとでも味わえるのがうれしい。
読了日:06月22日 著者:岩井 圭也
チョウセンアサガオの咲く夏チョウセンアサガオの咲く夏感想
ブラックだったり、ちょっとほっとしたり、この字数でちゃんと読ませる技を感じた。けれど、私はやっぱり長編の方が好きだな。
読了日:06月23日 著者:柚月裕子
嫌いなら呼ぶなよ嫌いなら呼ぶなよ感想
う~ん、ややこしくて大変そうな人々がいっぱい。突き詰めれば、そんな気持ちなのかもしれないけれど、突き詰めていられないとその気持ちに目をつむって生きているのかもしれない。でも、突き詰めると病んじゃうよ。
読了日:06月27日 著者:綿矢りさ
まっとうな人生まっとうな人生感想
前編よりも、突拍子のなさが抑えられたのと、地域になじみがある(と言っても、旅行に行った程度だけど)ので、読みやすかった。そして、コロナが心が敏感な人にとってどう影響するのかもとてもよく伝わってきた。鈍感である私でも閉塞感の毎日だったのだから、さぞやと思う。
読了日:06月30日 著者:絲山秋子
地図と拳地図と拳感想
ヘビーな本だった。重量的にも内容的にも。2分冊に分けてくれればよかったのに。戦争を色々な側面から伝える本は多く、これは地図・建築から捉える。都市をつくるという事、誰のために、何を目的に。そして、必要がなくなれば、なくなる。私は急激に変化した街に住んでいるのでそれは良く分かる。特に、戦争ではその情勢によって、目的や必要性が変わるということが伝わった。ボリューム以上に読み応えがあった。
読了日:07月08日 著者:小川 哲
黄色い家 (単行本)黄色い家 (単行本)感想
救われない物語のような気もするが、優しい人に恵まれてここまで来れたのかもしれない。現実はもっと過酷なのでは。危機感があっても、それ以外の選択肢が考えられなければ、言われるがままに目先に追われ進んでしまうのだろう。こうすればいいのに、という考えも浮かばないまま目が離せず読み進めた。
読了日:07月11日 著者:川上未映子
マル農のひとマル農のひと感想
農業とか植物は全くのシロウトなので、真偽のほどは分からないけれど、常識を疑うのは大切。そして、既存の方法を変えることの大変さが伝わってきた。本当に、農薬少なく肥料なくで元気においしく育ったら素敵だ。
読了日:07月13日 著者:金井真紀
アフリカではゾウが小さい 野生動物撮影記アフリカではゾウが小さい 野生動物撮影記感想
タンザニアのンゴロンゴロには行ったことがあって、本当にこういう風景が見れるのだけど、こういう写真は撮れない。もちろん普通に行ったのでは見ることのできない光景を、狙って瞬間で切り取れるのもすごい。大きい写真で観たいなぁ。
読了日:07月14日 著者:岩合 光昭
語学の天才まで1億光年語学の天才まで1億光年感想
まさに、親しくなるための語学。辺境の言語も使うということで体当たりかと言うと、決してそうではなく、学び体系立てて分析し準備して行っているのがすごい。ウケる、ノリの前にちゃんとした事前知識を持っているのだ。挨拶がない、お礼の言葉もない文化もあるというのが発見だった。必要があって、言語は増えていくんだな。
読了日:07月24日 著者:高野 秀行
インヴェンション・オブ・サウンドインヴェンション・オブ・サウンド感想
結構グロく、訳が不自然なところもあって、中々読み進めることができなかったが、音響効果技師という仕事も初めて知れたし、アメリカの闇も感じた。
最後が、ちょっとだけ救われたかな。
読了日:08月07日 著者:チャック・パラニューク
ミシンと金魚ミシンと金魚感想
タイトルに関わるシーンはほんのわずかだけれど、それがカケイさんの人生のキーなんだな。モノローグは軽い口調だからこそ、耐えて生きてきた女性の人生の重さを感じた。
読了日:08月12日 著者:永井 みみ
MasatoMasato感想
夏休みに明るい気分になれる本を読もうと思って手に取った本。少年が、親の転勤で海外に行き現地校で苦労しながら、自立していく話。応援しながら読んでいって楽しかった。母親もスキルがあるんだから、海外で楽しめればよかったのに。続編もあるようなので、読んでみよう。
読了日:08月17日 著者:岩城 けい
教誨教誨感想
哀しいストーリーだった。流れをどこかで断ち切れることはできなかったのだろうか。教誨師のような人に、前に出会えていたら。救いようがなくて、やりきれない。
読了日:08月23日 著者:柚月 裕子
渚の螢火渚の螢火感想
沖縄は戦争で大変だっただけでなく、戦争が終わってからも苦労があって、日本に戻ってよかったと言う単純なものではなかったというのがよく分かった。その歴史と、返還の状況と、事件が組み合わさっていて読みごたえがあった。沖縄の言葉がよく分からないので、その状況であってものんびりしているのか、焦っているのかがわからず残念だった。
読了日:09月02日 著者:坂上 泉
MattMatt感想
Masatoのときは、異国に慣れていくことが中心だったが、慣れていく中で、そして、成長するにつれて、自分の置かれている場所に対するあれこれが露呈してきた。日本に住んでいれば、日本を意識することは少ないし、同じ価値観で生きているので見えてこない人種差別など、日本人の代表でもないので背負わされることに対するもがきが非常に伝わってくる。このあとどう成長していくのか。次作も期待。
読了日:09月11日 著者:岩城 けい
MM感想
帰国子女の知り合いがアイデンティティに悩むと聞いて今一つピンと来ていなかったのだが、日本に帰っても違和感があるし、長く住んでいる異国でも疎外感(というより、もっと激しい差別や偏見)を感じるというのがこの3部作でよく分かった。大人になって、もっと上手くかわせるようになるのか、ますます孤独を感じるのか。見たいような見たくないような。日本で暮らす外国人についてもちょっと見方が変わったような気がする。
読了日:09月18日 著者:岩城 けい
グアテマラの弟 (幻冬舎文庫)グアテマラの弟 (幻冬舎文庫)感想
勝手な印象だけど、この姉にしてこの弟ありという感じ。行くことがなさそうなグアテマラのアンティグアに日本人のたまり場があるというのもびっくりだし、そこの暮らしも新鮮だ。インターネットができてすぐにテレビ電話ができちゃう時代世界は狭くなったけど、やっぱり広い。
読了日:09月26日 著者:片桐 はいり
中庭のオレンジ (単行本)中庭のオレンジ (単行本)感想
物語は途中から始まって、途中で終わる、まさに一篇一篇がそんな感じ。いつの間にか物語に引き込まれ、え?ここで終わるの?と終わる。余韻を味わえばよいのに、次の話に移ってしまう。多分、著者もそれを狙っているのでしょう。
読了日:09月26日 著者:吉田 篤弘
オール・ノットオール・ノット感想
最初の場面が近所だったり、出てくる女子校や横浜元町も馴染みだったり。でも、四葉さんって私よりずっと年下で、それでも古き良き時代感。。。う~む。タイトルは、一つ切れてもつながり続ける人との関係を示しているのか。それとも、一つ切れても大して変化しない世の中を示しているのか。一番面白かったのは、最終章。日本への怒り、ここを中心としたストーリーも読みたい。
読了日:09月30日 著者:柚木 麻子
マリエマリエ感想
女性誌の連載?ではないのか。年下の男性に思われる夢は結構女性にはあると思うし、大人の女性のおとぎ話なのかな。ちょっとだけキュンとはしたし、主人公が感じる性差の違和感は分かるけど、なんだか入り込めなかった。
読了日:10月02日 著者:千早 茜
メロスの翼メロスの翼感想
青少年たちがまっすぐ生きていく話はいい。まっすぐすぎてしまった場面もあるが。羽根さんがイケメンすぎるというところと、彼がどうしてこんなに困った人を助けているのかの背景が分からなかったのがちょっと不満だが、うまく行きすぎなところはそれでもいいと思えた。読後感爽やか。
読了日:10月06日 著者:横関 大
ヘルシンキ 生活の練習 (単行本)ヘルシンキ 生活の練習 (単行本)感想
社会に不満があっても何も行動は起こさず、ただただよく知りもしない海外にあこがれる傾向はある。だから、こうやってフラットに海外で生活することで感じる「違い」(よさ、悪さではなく)を読めて楽しかった。そして、性格・人格ではなくスキルと考える方法は、役に立ちそう。
読了日:10月11日 著者:朴 沙羅
英語が出来ません英語が出来ません感想
いろんな切り口から日本人がなぜ英語が苦手なのかを書いてあり面白かった。第7章のXXX、確かにそうだ。60過ぎて私がまだ英語を勉強している理由は、色々な人とコミュニケーションを取りたいから、だったらそれに合わせて勉強すればいいわけね。…にしても、カタカナ英語は発音に近いカタカナにするくらいできないかなぁ。勝手に省略したりもせずに。
読了日:10月16日 著者:刀祢館 正明
スペインの家:三つの物語 (白水Uブックス)スペインの家:三つの物語 (白水Uブックス)感想
短編ではあるけれど、なかなか奥は深い。訳もいい。田舎や伝統的なものの憧れは世界共通なんだな。ロビンソンクルーソーのサイドストーリー的なものも視点が変わって面白かった。結構なボリュームの訳者のあとがきで更に理解が深まる。
読了日:10月20日 著者:J.M.クッツェー
リスペクト ――R・E・S・P・E・C・T (単行本 --)リスペクト ――R・E・S・P・E・C・T (単行本 –)感想
物資やサービスを獲得するのではなく、人間としての尊厳が欲しいのだと言うのがテーマ。困っているなら助けるという一方通行ではなく、助け合おうという共助の姿勢。それを訴え行動する勇気と実行力が眩しい。登場する日本人はちょっとステレオタイプだったけれど、読んでてスカッとした一方、日本を振り返ると。。。となる。
読了日:10月25日 著者:ブレイディみかこ
ホテル・カイザリンホテル・カイザリン感想
短編集で様々な気分が味わえる。イヤミスと言われるけれど、それだけじゃなく気分爽快になる話もあり、一冊でお得感満載だった。秋の夜長にぴったり。
読了日:10月28日 著者:近藤 史恵
#真相をお話しします#真相をお話しします感想
読者を驚かせたいという意図が見えてきて、ストーリーに入り込めなかった。もちろん、そう来たかと驚いてはいたんだけれど。
読了日:10月30日 著者:結城 真一郎
北関東「移民」アンダーグラウンド ベトナム人不法滞在者たちの青春と犯罪北関東「移民」アンダーグラウンド ベトナム人不法滞在者たちの青春と犯罪感想
日本の少子化と高齢化⇒人手不足⇒低賃金の外国人を名目良く働かせる仕組み⇒外国人来る⇒辛くて逃げる⇒アンダーグラウンドへ。技能実習制度の実態やそこから逃亡して不法滞在者が多いのも聞いてはいたが、地下に潜ってからの行動をここまで調べたのは驚く。日本は衰退し、新興国は成長し、そんな低条件で働く人がいなくなったら、どうなるんだろう。
読了日:11月07日 著者:安田 峰俊
超解読 乙嫁語り ~中央アジア 探索騎行~ (三才ムックvol.930)超解読 乙嫁語り ~中央アジア 探索騎行~ (三才ムックvol.930)感想
乙嫁語りのエピソードについて、中央アジアの文化や風習を説明している副読本。著者の略歴はないが、中央アジアの知識と乙嫁語り愛を感じる。どこかに、中央アジアの衣食住が比較できる博物館とかないかしら。字だけじゃなくて、ものが見たくなる。もちろん、中央アジアに行きたくもなる。
読了日:11月08日 著者:
やさしい訴えやさしい訴え感想
やさしい訴えの譜面は持っていて、私が弾いても全然特別な感じはしないけれども、この本を読むと特別な曲に思えるからすごい。でも、この主人公は好きなタイプじゃなかったので前のめりには読めなかった。
読了日:11月11日 著者:小川 洋子
楽園の犬楽園の犬感想
戦争とは、殺し合いだけではなく、人を疑い続けなければならないということも悲惨だと改めて思った。
日本人は、今でも確かに自死に対して美化する傾向にあるような気がする。生き抜こうとすることの困難さと尊さが伝わってきた。ちょっと犬にしては、大胆な行動が多くなぜばれないのかは不思議だったけれども。
読了日:11月13日 著者:岩井 圭也
逆転正義逆転正義感想
正義とは見方によって変わるのだという話がこれでもか、と出てくる。
正しくないものには何をしてもいいという正義が蔓延する現代。どんでん返ししても、すっきりとはしないのが私にはよかった。世の中、完全〇も完全✖もないということだな。
読了日:11月16日 著者:下村 敦史
獣の夜獣の夜感想
なぜか、短編集を続けて読んでいる。気が付かないところに心が引っ掛かっていたり、原因だと思い込んでいることがそうじゃなかったり。確かに自分の気持ちってよく分かっていないかも。と気づかせてくれて、更に森絵都さんらしく何となく落ちが温かいのがよかった。寒い夜にぴったり。
読了日:11月18日 著者:森 絵都
雨にシュクラン雨にシュクラン感想
カリグラフィーに興味があって手に取った。トルコで見た文字が圧巻だったので。なるほど、アラビア書道なのね。日本の筆のように筆に毛がついているのではなく、インクに毛(糸?)が入っていてゆっくり書くとかすれないとか。もちろん、これはツールで合って、みんなと違うということに過敏な高校生の価値観が、広がっていく様子がよかった。中高生だけでなく大人だって中々人と違うことに堂々とはなれない。
読了日:11月21日 著者:こまつ あやこ
踏切の幽霊踏切の幽霊感想
ちょうどこの路線に乗っているときにこの本を開き始めてちょっとぞわっとしたけれど、幽霊の話ではなくて哀しい女性の話だった。この女性には無事に死後の世界に行ってほしいし、主人公には前を向いてほしい。
読了日:11月26日 著者:高野 和明
謎解きはビリヤニとともに (ハヤカワ・ミステリ文庫 HMチ 6-1)謎解きはビリヤニとともに (ハヤカワ・ミステリ文庫 HMチ 6-1)感想
真実を追求して悪を取り締まることで、周りの人を不幸にした主人公。でも、真実はすべて正義なのか、は難しいところ。英国のインド料理屋とか、憧れのインドの猥雑な雰囲気とかを妄想しながら、実際にビリヤニを食べながらスパイスとともに楽しんだ。
読了日:12月01日 著者:アジェイ・チョウドゥリー
乙嫁語り 柘榴の花咲くころに…… (英和ムック)乙嫁語り 柘榴の花咲くころに…… (英和ムック)感想
乙嫁語りを大人買いしたと話したら、友達が貸してくれた。原作全部読んでから、読むようにと。もう一冊非公式ガイドブックを読んだけど、こちらの方がより地域とか風習が詳しい。もう一度、これを片手に原作を読み直してみたくて、もう絶版になっていたけれど中古で購入。中央アジア興味津々。
読了日:12月01日 著者:
素敵な圧迫素敵な圧迫感想
「爆弾」からのこの心地悪さ感、結構好きだ。短編だから、心地悪さだけじゃなく、ちょっと笑える作品もあり、息抜きができるから、楽かも。
読了日:12月04日 著者:呉 勝浩
宙わたる教室宙わたる教室感想
宇宙を研究するファンタジーと思ったら、実際にあった話がベースにあったとのこと。いい先生に出会うというのは、本当に大切。そして、生徒たちのバックグラウンドや世代が違うからこその厚みも重要。「その気にさせていい」って安心して言える世の中になってほしい。
読了日:12月08日 著者:伊与原 新
太陽諸島太陽諸島感想
言葉にこだわっている前作に比べ、それほど言葉が気にならなかった。にしても、人と人をつなぐ言葉は重要。例えば、英語を話すとき、表情が大きくなって感情が表面に出るとか見える人格にも影響していると思う。だから、日本語で読むこの6人の会話ももっと複雑で読み手の想像力が必要なのね。出発点に戻って終わりの今回。これで終わらないと思うのだけど。
読了日:12月15日 著者:多和田 葉子
旅に出よう――世界にはいろんな生き方があふれてる (岩波ジュニア新書)旅に出よう――世界にはいろんな生き方があふれてる (岩波ジュニア新書)感想
大人になる前にこんな本に出会っていたら、人生変わっただろうなと思う。狭くなったと言っても世界は広い。ネットで色々分かると言っても行ってこそ会ってこそ分かることが沢山。しばらく行けていない海外にまた出かけよう。
読了日:12月19日 著者:近藤 雄生
乙嫁語り コミック 1-14巻セット乙嫁語り コミック 1-14巻セット感想
ずっと読みたかった乙嫁語りを一気に。乙嫁それぞれの物語が地域とキャラクターに合わせて書かれている。中央アジア熱が高まる。
読了日:12月20日 著者:森薫

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